エイプリルフール


誰かを愛するということが、僕にはよくわからなくて、
薄っぺらい感情の上を、漂っているだけだという思いもある。
ただ、他人の幸せを願う気持ちはおそらく本当で、
それを50メートル、100メートル先に広げていくことによって、
何かが変わっていくんじゃないかって予感はあるんだな。


僕はできるだけ引きこもっていたいから、
20人もの人生を引き受けるだけの強さは、たぶんない。
でも、僕の理想に賭けてみようという人もいるわけで、
だとすれば僕は自分の生き方そのものを、
ときには無自覚に肯定しなければ、いいわけが立たない。


大切なのは、僕自身が信じるに足る存在なのかどうかではなく、
信じてくれる人の尊さを、裏切らないという決意だ。
僕は尊い何かのために、嘘をつき続ける存在でありたいと願う。