『ラッシュライフ』/伊坂幸太郎


「それは、でも大変だ」 佐々岡が考えた末に言った。
「どうしてだ?」
「名探偵は事件を解決しつづけなくてはいけない」


伊坂幸太郎の第2作。
人間観察を得意とする空き巣専門の泥棒、黒澤。17階から飛び降り自殺した父親の影に悩まされ、新興宗教に入った絵描きの河原崎。愛人の妻を殺そうとたくらむ精神科医、京子。リストラにあい、人生を悲観する元デザイナーの豊田。金で買えないものはないと豪語する画商の戸田。すべてを見通す神のような存在「高橋」。そして老犬。


さまざまな登場人物が交錯しあい、仙台を舞台にしたバラバラ死体事件が収束していく。物語はスピード感満点で、けっして飽きさせない。プロットの上手さはもちろん、洞察が行き届いた文章が心憎いなぁ。文庫本で450頁ちょっとだが、読みはじめればあっという間だろう。キャラクターも魅力たっぷりで、安心して読める。


伊坂幸太郎の小説を料理にたとえると、完成度の高いプレートランチだろうか。ちょうど腹八分目で、美味しいトコどりをしたような幸せな気分になれる作品だ。


ラッシュライフ (新潮文庫)

ラッシュライフ (新潮文庫)