『ティファニーで朝食を』/トルーマン・カポーティ


秋山晶さんの「キューピー アメリカン マヨネーズ」の広告シリーズでも使われている、カポーティの名作短編。幸いなことに映画も未見なので、先入観なく味わえた。


表題作のヒロインは、20歳のホリー・ゴライトリー。名刺に「旅行中(トラヴェリング)」と書かれているとおり、ニューヨークを漂泊するように生きている。


「いつかお話したように、あたしたちはある日、河のほとりで偶然出くわしただけのことよ。ただそれだけの縁なの。だから、おたがいにどうしようと勝手ってわけさ。なにひとつ約束しあったってわけじゃないんだからね。あたしたちは一度も――」


ニューヨークから姿を消したホリーは、ブラジルへ渡り、そしてアフリカを遍歴したのだろうか。物語の結末は、読み手の想像に委ねられている。彼女の飼い猫は居場所を見つけた。だがホリーのような人間にとって、漂泊しつづける方が幸せなのか。家を見つけるほうが幸せなのか。もう一度、冒頭から読み返したくなるような、不思議な余韻がある小説だ。


そのほか、「わが家は花ざかり」「ダイヤのギター」「クリスマスの思い出」を収録。こちらは「ティファニー〜」よりも幻想的で、正統なアメリカン・ショート・ストーリー。


ティファニーで朝食を (新潮文庫)

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