『オール・ザ・キングスメン』/ロバート・ロッセン監督作


ハスラー』の監督ロバート・ロッセンが、「いかに政治家は腐敗するのか」を痛烈に描いた作品。1949年のアカデミー賞作品賞を受賞したが、戦後の日本では政治的問題があり輸入されず、ロッキード事件で沸く1976年に公開された。ロッセンは共産党員であった過去が暴かれ、1953年以降はハリウッドを去っている。


『オール・ザ・キングスメン』がいまも評価され続けているのは、「権力は常に堕落する」という普遍性を真正面から描いているからだろう。主人公のウィリーは農民出身で、貧しい民衆を救うために政治の世界に乗り出すが、彼もまた権力の魔性にとりつかれてしまう。飲酒運転で交通事故を起こし、同乗していた女性を死なせてしまった息子をかばうため、事件をもみけす姿の哀れさを見よ。人はけっして傲慢になってはならない、という鋭い教訓をつきつける骨太な作品。