映画

『幸せの1ページ』/ジェニファー・フラケット&マーク・レヴィン監督

ジョディ・フォスターを久しぶりに観たけれど、神経質な作家の役をうまく演じている。さすがオスカー女優。物語のほうは消化不良を起こしており、3人のエピソードがあまり連動もしないまま、なんとなく終わった印象。ニム(アビゲイル・ブレスリン)に焦点を…

『タンポポ』/伊丹十三監督

食べること、とは、すなわち生きること。 ラーメン屋の話が主軸ではあるけれど、伊丹監督らしい人生賛歌になっている。 特に白服(役所広司)のエピソードでは、食のエロティシズムを描く。 フランス映画のような美醜のギリギリを表現する才能はすごい。 生…

『ヒトラー 最期の12日間』/オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督

ここで描かれる私人としてのヒトラーは、優しさや人の痛みを理解する男。 しかし「総統」としての彼は、非情、冷酷な暴君となる。 それを二面性と見るのは適切ではないだろう。 なぜなら、彼の中ではそのふたつは矛盾しないからだ。 完全に合一した精神が、…

『用心棒』/黒澤明

もういまさら何をいうこともない傑作。 疲れも吹き飛ぶ痛快さ。 黒澤明は「巨匠」のイメージが先行しているが、 豊かなユーモアを織り交ぜテンポ良く物語を展開する芸達者。 小難しいことはいっさいないので、観ないと人生の1/3くらいを損する。 役者はもち…

『フィールド・オブ・ドリームス』/フィル・アルデン・ロビンソン監督

約2時間、ずっとぐずぐず泣いていた作品。 親父が死んでから、こういう映画には弱い。 15年くらい前に観たときとは、違う感動があった。 アメリカには「父と子」をテーマとした文学の潮流が脈々としてあって、 この映画もその文脈で澄んだ輝きを放っている。…

『迷子の警察音楽隊』/エラン・コリリン監督

エジプトのアレクサンドリア警察音楽隊が、手違いからイスラエルの辺境の町に迷い込んでしまうというドラマ。すべての登場人物が途方に暮れている感じで、もどかしさを誘う。何も起こらない映画だが、じんわりとしたユーモアがあって、退屈ではない。「迷子…

『ハンコック』/ピーター・バーグ監督

ウィル・スミス主演のスーパーヒーローもの。 鼻つまみもののヒーロー、という設定で前半は進むが、中盤でとんでもない事実が発覚。展開がちょっと唐突なのだけれど、ダレてしまうよりはいいと思った。頭をカラッポにして楽しむのが吉。

『マーゴット・ウェディング』/ノア・バームバック監督

『イカとクジラ』が妙に印象に残ったノア・バームバック監督の作品。さらにジャック・ブラック、ニコール・キッドマンが出演となると、観るしかないでしょう。相変わらずろくでなしの人間ばかりが織りなす、ろくでもないエピソードの連続なのだけれど、視線…

『崖の上のポニョ』/宮崎駿監督

ジブリ作品は好き嫌いがあるのだけれど、これは「好き」な方。『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』はどうも何かに対するアンチテーゼを感じたのだけれど、この作品は徹底した「受容」があって、すがすがしかった。この天真爛漫さに感じるドキドキって、「…

『墨攻』/ジェイコブ・チャン監督

酒見賢一の原作を読んだのは高校生の頃なので、もう10年以上前のことになる。日本作家が中国の春秋時代を描いた小説が、中国で映画化されるとは感無量。墨家の革離を演じるアンディ・ラウが理想と現実のはざまで思い悩むさまは、とてもかっこいい。ただ、墨…

『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』/スティーヴン・スピルバーグ監督

あんまり期待しないで観たのだけれど、前3作と変わらない面白さにぶっ飛んだ。 ルーカス&スピルバーグは、とびきりのエンターテインメント冒険映画を撮ろうと意気込んだのだろう。ナチスの神秘主義に代わり、本作で登場するのはスターリンの秘蔵っ子で、超…

『ザ・マジックアワー』/三谷幸喜監督

面白いんだけど、なんだか乗り切れなかった映画。 映画に対する愛情、はたっぷりと味わえたのだけれど。 三谷作品のわりには、プロットが単純だからかもしれない。 それにしても、綾瀬はるかが気になって仕方ないのはなぜだろう。 寺島進は、あいかわらず素…

『ダークナイト』/クリストファー・ノーラン監督

久々に鳥肌のたつ映画を観た。 ヒース・レジャー演じるジョーカーは夢に出てきそうなくらい怖いが、 特に眼力の強さが危険領域に突入している。 クリスチャン・ベールはそれほど存在感がないが、 闇に生きるバットマンを演じるにはこれくらいで良いのかも。 …

『モナリザ・スマイル』/マイク・ニューウェル監督

1963年の名門女子大を舞台に、助教授のキャサリン(ジュリア・ロバーツ)が女生徒たちに「自分の頭で考えて生きる」ことを教えていく物語。ヒラリー・クリントンの自伝から着想を得たともいわれている。不倫ばかりする女生徒ジゼル役のマギー・ジレンホール…

『イカとクジラ』/ノア・バームバック監督

ウェス・アンダーソン製作のホームドラマ。 ノア・バームバック監督の自伝的映画でもある。 父と母と長男と次男と、それぞれに「イタイ」ところがあって、 でも自分にもこういうところあるよな、って思わされてしまう。 特に父親(ジェフ・ダニエルズ)は最…

『グッド・ウィル・ハンティング』/ガス・ヴァン・サント監督

マット・デイモンとベン・アフレックが共同で脚本を書き、 ロビン・ウィリアムズがオスカー(助演男優賞)を獲得した作品。 主人公のウィル・ハンティング(マット・デイモン)は卓越した記憶の 持ち主で、数学の難問を易々と解いてしまう「天才」。 だが傷…

『明日の記憶』/堤幸彦監督

渡辺謙が、若年性アルツハイマーにかかるサラリーマンを熱演。 壮絶な話を想像していたので、ちょっと身構えて観たのだけれど、 いろんな場面で「がんばれ、がんばれ」というエールが送られていて、 爽やかな余韻のある作品だった。 主演の渡辺謙、樋口可南…

『トリック 劇場版』/堤幸彦監督

映画というか、テレビドラマの特番って感じ。 もっと横溝っぽくても良かったんじゃないかな。 このシリーズはキャラクターがものすごく良いので、 脚本が最高ならもっと面白くなると思う。 テレビの第1シリーズが傑作だっただけに、ざんねん。 トリック -劇…

『ディパーテッド』/マーティン・スコセッシ監督

皆殺しのスコセッシ、といえばスコセッシ的。 突出した凄みはないのだけれど、良質な犯罪映画といえる。 人間の死を単なる「消費」に変えてしまう淡白さはこの人ならでは。 デ・パルマだと、もう少し情念が入る感じで、好き好きかな。 導入部分がかなり無理…

『間宮兄弟』/森田芳光監督

あー、面白かった。という類の作品。 沢尻エリカと北川景子の本間姉妹が、良い。 間宮兄弟の部屋は、塩梅がむずかしいと思うのだけれど、 よく調和がとれていた(適度にオシャレなオタク部屋です)。 春の午後にまったり観るにはいい映画だ。 間宮兄弟(通常…

『許されざる者』/クリント・イーストウッド監督

四度めの観賞。 年老いたガンマン、ウィリアム・マニーは何のために、暴力で町を支配する保安官との対決を選んだのか。それは人の尊厳を守る、という一種の信念によるものではなかったか。町を去るウィリアムは叫ぶ。「娼婦を人として扱え。さもないと、お前…

『波止場』/エリア・カザン監督

主演はマーロン・ブランド、エヴァ・マリー・セイント。 巨匠エリア・カザン監督、1954年の作品。 アカデミー賞では8部門を受賞した。 この映画の見所は、終盤の波止場のシーン。主人公のテリー(マーロン・ブランド)は、日銭を稼ぐ生活の中で失ったプライ…

『紳士協定』/エリア・カザン監督

『エデンの東』や『波止場』のエリア・カザン監督作。 1947年のアカデミー賞で作品賞、監督賞、助演女優賞(セレスト・ホーム)を受賞。 “反ユダヤ主義”に関するルポタージュを通じて、状況を黙認するのは 肯定することと同じことだ、という鮮烈なメッセージ…

『墓石と決闘』/ジョン・スタージェス監督

おそらくワイアット・アープは、ウェスタンで最も有名なヒーローだろう。同じスタージェス作品の『OK牧場の決斗』も素晴らしい出来だったが、本作の緊張感はとてつもなくすごい。法と復讐のはざまで揺れるワイアットの姿を、繊細に描いている。連邦保安官と…

『アスファルト・ジャングル』/ジョン・ヒューストン監督

1950年製作のクライム・ムービー。 マリリン・モンローも端役で出演している。 この映画のモンローはとても美しいが、ホントにチョイ役。 それよりも強盗計画をリードする“ドック”を演じるサム・ジャッフェが素晴らしい。葉巻をくわえたプロの犯罪者を、嫌味…

『アフリカの女王』/ジョン・ヒューストン監督

ドイツ領の東アフリカで、宣教師の妹とオンボロ船の船長がドイツ軍の砲艦に挑む冒険活劇。主演はハンフリー・ボガード、キャサリン・ヘプバーン。最初はぎくしゃくしていた二人の関係が、ともに困難を乗り越えることで愛情に変わっていく様子が急がずに描か…

『ミスタア・ロバーツ』/ジョン・フォード監督

文句をいうだけで、闘わないでいるのは、逃げているだけだ。 「退屈」という見えない敵と、闘う男の物語。 主演はヘンリー・フォンダ。暴君の艦長役に、ジェームス・キャグニー。 日和見主義の士官役を演じたジャック・レモンは、 1955年のアカデミー助演男…

『魍魎の匣』/原田眞人監督

朝の8時すぎに目が覚めたので、一念発起して梅田の映画館へ。 うん、これはえぐいなぁ……。 僕自身は意外にも(?)、人体破壊系の映像は苦手なので、 ちょっとげんなりした。夢に見そう。 なんだか、友成純一が原作みたいだな。 そういう意味では、京極夏彦…

『モンキー・ビジネス』/ハワード・ホークス監督

1952年公開のコメディ映画。 主演はケイリー・グラント、ジンジャー・ロジャース。 社長秘書の役で、マリリン・モンローも出演している。 チンパンジーの悪戯によって、完成してしまった体力や気力が若返る薬。その薬を飲んだ化学者のバーナビーとその妻は、…

『シェーン』/ジョージ・スティーヴンス監督

「シェーン、カムバック!」で有名な、『シェーン』である。 20年ぶりくらいに観たのだけれど、やっぱりいい映画だな。 「自分にはこの生き方しかできない」と語り、町を去るシェーンの生き様は、 「あー、どこでも行きますよ」という僕の生活信条と近いとか…