『文庫版 鉄鼠の檻』/京極夏彦


京極堂>シリーズ再読の旅も、4作目に突入。
今回は「禅」についての問答が続き、読んでいてくらくらするというか、哲学(ではないのだが)に酔ったような感覚におちいる。おそらくシリーズ中、最も煙にまかれる作品だろう。しかしそれもそのはず。禅は「不立文字」であり、言葉が効く世界ではない。つまり、京極堂はけっして勝つことのできない土俵である。そこでどんな憑物落としが行なわれるのか。その隙をつくような手際の鮮やかさが、本作品で一番のスリリングな場面だと思う。


相変わらず関口君の間の悪さは健在で、この人が絡むと、必要のない不幸が生まれるのはどうしたものだろうか。『姑獲鳥の夏』と呼応するような小説なので、続けて読んでいくと、事件の背景も理解しやすい。というかこの作品あたりから、シリーズの記憶を保っていないと、どうにも腑に落ちない話が多くなるだろう。たんに私の記憶力が悪いせいかも、しれないが。


文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)

文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)