『扉は閉ざされたまま』/石持浅海


刑事コロンボ』や『古畑任三郎』のように、犯人のトリックを探偵役が論理で暴いていく叙述ミステリ。この作品が秀逸なのは、犯人の側だけではなく、探偵役にもその行動の「動機」が隠されている点にある。つまり、二重の意味での「ホワイダニット」になっているのである。


さまざまな探偵小説論において、「名探偵」と「犯人」の関係性が論じられてきたが、この作品はその間隙を見事に突いてきた。ミステリという形式だからこそ、描きうる「冷血さ」を感じた小説だ。ノベルスで200頁程度というボリュームも丁度いい。2006年版「このミステリーがすごい!」第2位というのも、うなづける。


扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル)

扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル)