『崖の館』/佐々木丸美


<館>三部作の第一作。佐々木丸美は初めて読んだ。


詩や絵画、哲学、人形など少女趣味にあふれる物語だが、内容はかなり重い。人間の心理、という薄布が次々と重ねられていき、読み進めるうちに息苦しさを感じる小説だ。文体も独特で、場面が語り手である涼子の心情にあわせて飛ぶため、軽い眩暈を覚えてしまう。くせになる酩酊感、とでもいうべきか。犯人の動機も、この世界観の中では必然と思われるから不思議。なんだか夢を見ているような、それでいて現実の悪意をつきつけられるミステリだ。


恩田陸の諸作、特に『麦の海に沈む果実』あたりはこの作家の影響を受けているように感じる。恩田陸の方が、ずっとライトで読みやすいけれど。


崖の館 (創元推理文庫)

崖の館 (創元推理文庫)