『銀河英雄伝説(7) 怒涛篇』/田中芳樹


自由惑星同盟を追われ、“不正規隊”となったヤン艦隊は、二度目のイゼルローン攻略に向かう。一方、ラインハルトは自由惑星同盟の息の根を止めるべく、ハイネセンへ。最後の抗戦を試みる老将ビュコックとの戦闘がはじまった。


ヤンとラインハルト、両者の“矛盾”が際立つ7作目。ヤンは「民主主義」の立場から、専制者となることを拒否する一方で、「独裁政治を選択する自由意志も存在するはず」と述懐する。優れた独裁主義と愚劣な民主主義、いずれが幸福をもたらすのか。腐敗した政治家たちに落胆しながらも、民主主義のために戦うヤンの価値基準は、「国家は人民のために存在するのであって、その逆ではない」というところに落ち着くのだろう。かたやラインハルトは「銀河の統一」に向かい、“敵”を滅ぼしていくが、では平和が訪れたとき彼は何に生きがいを見出すのか。英雄は乱世にしか存在しえないのではないか、という命題が、栄光の背後に影を落としている。


銀河英雄伝説〈7〉怒涛篇 (創元SF文庫)

銀河英雄伝説〈7〉怒涛篇 (創元SF文庫)