『ベルカ、吠えないのか?』/古川日出男


イヌ、である。
20世紀、戦争の世紀、軍用犬の世紀。
時代を生き延び、生み殖やすイヌたちの物語である。
イヌに呼びかけるような文体が、
海外の詩のようでもあり、読み手を駆り立ててくる。
太平洋戦争にはじまり、朝鮮戦争ベトナム戦争、アフガン戦争など、
数々の戦争がイヌの物語として語られるのが面白い。
こういう小説は、イヌがしゃべったり、思考したりするとコメディに
なりかねないが、「神(狂言回し)」に近い語り手をすえることにより、
獣の世界にどっぷりと浸からせてくれた。
面白い小説だった。


ベルカ、吠えないのか? (文春文庫)

ベルカ、吠えないのか? (文春文庫)