『国家の品格』/藤原正彦・著


なんというのかな。これは、まぁ、一種のブログ本みたいなものかもしれないな。帯コピーには“画期的日本論”なんて書かれているが。どこをどう読めば、画期的になるんだろう。そう思わざるをえないほど、ありきたりの話が書かれている。まぁ、講演記録が元だから、こんなものなのかな。


本書が評論といえない一番の理由は、著者本人が論理的であることを放棄してしまっている点にある。語られていることはいちいちもっともなのだけれど、基本的には使い古された言説であるわけだし。数学者であれば、むしろ論理で国家の品格を語るべきだったのではないだろうか。


ちなみに、私が気になったのは次の一節のみ。


クンバコナム近くのタンジャブールで見たブリハディシュワラ寺院は、本当に息を呑むほどに壮麗でした。この寺院を見た時、私は直感的にこう思いました。「あっ、ラマヌジャンの公式のような美しさだ」と。
ラマヌジャンは「私たちの百倍頭が良い」というタイプの天才ではありません。「なぜそんなことを思いつくのか見当もつかない」というタイプの天才なのです。
アインシュタイン特殊相対性理論は、アインシュタインがいなくても二年以内に誰かが発見しただろうと言われています。数学や自然科学の発見の殆どすべてには、ある種の必然性が感じられます。ところがラマヌジャンの公式群は、圧倒的に美しいのに、必然性がまったくわからないのです。


やはり、広告制作者としては、もっと美しいものに触れなければならない。


国家の品格 (新潮新書)

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