『バットマン:ダークナイト・ストライクス・アゲイン』/フランク・ミラー


よせ、ラーラ。彼は唯一の希望だ。このクソ野郎が。我々の唯一の希望なんだ。


あの傑作コミック『バットマンダークナイト・リターンズ』の続編。
前作のラストで地下にもぐり、私設軍隊を誕生させたブルース・ウェインバットマン)の死闘を描く。2001年に発表された本書には、行き過ぎた「監視社会」への警鐘と、「最高の悪は国家権力によって生み出される」という21世紀的な批判精神が宿っている。CG合成によって「創られた大統領」や、情報ハイウェイを疾走するアトム(原子の大きさにまで身体を縮小できるヒーロー)など、高度化するIT社会を投影しているのも見所のひとつだ。80年代に隆盛をほこったサイバーパンクは、文字通り「近未来」のものなのだと実感させられる。


また、前作に比べて大きく変わったのは、数々のアメコミヒーローたちが登場している点。フラッシュ、ワンダーウーマン、グリーンランタン、キャプテン・マーベルなど、豪華キャラクター陣が脇を固める。バットマン(自警団)VSスーパーマン(国家権力)という二項対立だった前作に比べ、物語に広がりが生まれている。もっとも、シンプルで力強いメッセージは、やや弱まった気がするが。


バットマン:ダークナイト・ストライクス・アゲイン (JIVE AMERICAN COMICSシリーズ)

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