『岡康道の仕事と周辺』


CMプランナー、岡康道の仕事をまとめた本。1997年発行なのでちょっと古いが、90年代の主要な仕事はだいたい網羅されている。本書では「補助線」というコトバが繰り返し語られていて、彼の広告手法がうまく解体されていると思う。


「広告の多くは、商品を手に入れた喜びを語る。しかし、今を失わなければ手に入らない商品もある。車も、そのひとつ」


「旅は、何かを癒す行動と仮定する。春の旅は、スタートの季節の旅。希望。しかし、スタートするためには、現在と別れなければならない。春は不安な季節でもある。すると、春の旅は不安を癒してくれるのではないか」


岡のコトバは、文学的だ。文学的でありながら、そこに酔うことなく、ポンと世の中をひっくり返してみせる。その鮮やかさ。意表を突かれた観客は、ただ呆然と、その映像と音とコトバを胸に刻み込むしかない。だからこそ、広告として機能している。


僕は果たして、別れから何かを学んできたのだろうか。


もうすぐ、夏がやってくるね。


岡康道の仕事と周辺 (Director and Designer SCAN)

岡康道の仕事と周辺 (Director and Designer SCAN)