『赤・黒(ルージュ・ノワール)』/石田衣良


IWGPの外伝長編。半端モノの映像ディレクターが、カジノの売上金を強奪しようとして、ドツボにはまっていくというお話。とはいえ、馳星周のような脂ぎったノワール(褒めてます)ではなくて、タッチは軽い。このへんは、シリーズの特徴をうまく利用していると思う。するりと読ませてくれる娯楽作品。


石田衣良の小説の優れた点は、ムダがないところだろう。主人公の特殊能力(映像を鮮明に記憶できる)が物語とうまく調和しているし、落ち目のガジリ屋とか、脇役の使い方もうまい。時代性がクローズアップされやすい作家だけれど、基本にはどっしりとした構成力がありますね。