『定年ゴジラ』/重松清


開発から30年、定年退職するお父さんが増えつつあるニュータウンを舞台にした連作短編。まぁ、重松清の作品だけに、安心して読める。


僕の場合、実家は水戸なのでニュータウンへの感慨はない。ただ都市生活者として、どう老後を過ごすのかという問いが、まったくないわけでもないのだ。いまのところ独身路線なので、家族をもつ青写真もないのだけれど、少し心のどこかでチリチリしたものを感じる。孤独ではあるのだろうな、とも思うし。ただ、現在の理想が、将来的にも理想でありつづけるわけではない、ということはよくわかる。結局、人生を批評することは、「ジャンケンの後出しみたいなもの」でしかないのだろう。


じゃあ、どうすればいいのか。と聞かれれば、とにかく今をがんばれ、としかいいようがない。がんばれ、と励ます存在が少なくなった今、こういう小説は貴重でもあるのかもしれない。


定年ゴジラ (講談社文庫)

定年ゴジラ (講談社文庫)