『タフの方舟(1)禍つ星』/ジョージ・R・R・マーティン


いやはや、これまた傑作ですね。
主人公のハヴィランド・タフは、1000年前に崩壊した連邦帝国の胚種船、<方舟>号の主にして、自称・環境エンジニア。全長30kmにもおよぶ超巨大な宇宙船は、宇宙中の生物のサンプルを保有する、生物兵器のカタマリのようなものだ。


第1話の「禍つ星」では、タフが<方舟>号を手に入れるまでの顛末が語られる。もともとはシリーズの番外編的に書かれたものを、連作集にする際にファーストエピソードにしたらしい。そのためか、やたらとサービス精神が豊富で、これでもかという展開が続く。リチャード・スタークの“悪党パーカー”ものと、『ジュラシック・パーク』と、『ウィザードリィ4』をミックスしたような感じか。


第2話「パンと魚」は、“産めよ、増やせよ”で人口が増え続ける惑星ス=ウスラムの食糧難を、タフが解決する。続く「守護者」も、突如現れた好戦的な海洋生物に対し、<方舟>搭載の環境エンジニアリング技術が効果を発揮する物語。エコロジー小説であるという見方も、できなくはない。


ところで本書の帯には、「宇宙一あこぎな商人ハヴィランド・タフ登場!」とあるのだが、彼は「元」商人ではないだろうか。それに、あこぎではないような……。慇懃無礼で無愛想ながらも、なぜか善きことをなしてしまう不思議なキャラクターこそが、このシリーズの魅力だと思うのだが、いかがだろうか。というわけで、次巻に続く。


タフの方舟1 禍つ星 ハヤカワ文庫SF

タフの方舟1 禍つ星 ハヤカワ文庫SF