『GOTH』/乙一
不思議な印象の小説だと思っていたら、なるほど、これは『妖魔夜行』が念頭にあるのね。乙一はライトノベルの地位をある程度引き上げたという点で、重要な作家なのだろう。
ただ、感覚的に77年生まれの僕らとは世代が違うというか、純粋だなという気はする。グループSNEは確かに偉大だったと思うけど、水野良や友野詳より、安田均の方が影響が大きいからなぁ。結局、現在の僕はファンタジー作家、というかライトノベルに価値を見出せていない。トールキンやムアコックは素晴らしいと思うし、G・R・R・マーティンの<氷と炎の歌>シリーズは好きなのだけれど。『ハリー・ポッター』が面白く読めない理由も、そんなところにあるのだろうか。
……話が脱線してしまった。もちろん、『GOTH』はファンタジーではないし、グループSNEとも関係がない。たぶん、『デスノート』のヒットと比較した方が、時代の気分だろう。本書で語られるのは、「怪物性」であり、「永遠性」でもある。そう、死とは「永遠」にほかならない。この作品を読んだときに感じる居心地の悪さは、トッド・ブラウニング監督『フリークス』とも似ているか。そんなことをライトノベルでやってのける乙一は、やはりすごい作家なのかもしれないな。
- 作者: 乙一
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