『流星ワゴン』/重松清


中年の悲哀を描かせれば天下一品、重松清の後悔小説。
悲しくなっちゃうくらい、人生の坂道を転がり落ちてきた38歳の永田さんが主人公だ。生きる希望を失くした彼が出会ったのは、5年前に交通事故で死んだはずの橋本親子。二人の「オデッセイ」に乗り込み、永田さんは「たいせつな場所」を巡っていく。そこは、もはや戻ることのできない過去。変えられない未来を思い、後悔の念に駆られるだけの巡礼は、地獄めぐりにも似ている。


過去に戻ってやり直したい、という気持ちは、誰でも感じたことがあるだろう。だがこの小説では、過去の地点には戻るが、やり直しはできない。自分の行為を、ただ受容することしかできないのだ。残酷な現実を見せつけられ、それでも人は生きていくことを選択できるのか。甘くはないが、爽快感の残る結末は、重松清の十八番。けっして暗いだけの物語に終わらないのが、書き手の良心かな。


流星ワゴン (講談社文庫)

流星ワゴン (講談社文庫)