『パニックの手』/ジョナサン・キャロル


じつはジョナサン・キャロル初体験。一読した感想は、ポップなトルーマン・カポーティみたい。アメリカ文学の匂いが濃厚な短編集ですね。


まず、しょっぱなの「フィドルヘッド氏」にヤラレた。途中までは、ピーターパン的なファンタジィなのだけれど……ラストがこうくるとは! 次の「おやおや町」は、設定が秀逸。「秋物コレクション」の洒脱な語りに酔い、世界幻想文学大賞受賞作「友の最良の人間」にくるまでには、すっかり虜になってしまった。地獄の風景をユーモアたっぷりに描く「ジェーン・フォンダの部屋」や、どもりの少女の秘密に触れる「パニックの手」も、こっそり誰かに語りたい作品だ。


翻訳が浅羽莢子、解説は津原泰水という組み合わせも豪華。
この作家は、全作品を追ってみないと。


パニックの手 (創元推理文庫)

パニックの手 (創元推理文庫)