『文庫版 姑獲鳥の夏』/京極夏彦
京極堂シリーズ第1作。
ノベルス版を読んだのが、もう10年も前になるとは。時の経つのは早いものだ。
デビュー作にはすべてが詰まっている、とよくいわれる。本書を改めて読み返してみて、完成度の高さにため息が出た。赤児の連続誘拐事件、密室消失事件、二十箇月も妊娠したままの女性。すべてが「言葉」によって解体され、憑物は落ちる。まるで騙し絵を見せられているような不穏さと、新たな像が浮かび上がってきたときの衝撃は、探偵小説の醍醐味だ。しかしそれに続く眩暈からの覚醒、関口の現実への帰還という鮮やかさこそが、京極堂シリーズの凄さなのだとも思う。
また、関口はこの事件で相当な心的外傷を負ったと思うが、続く作品群でもなんとか生き延びていくのだから、意外とタフなのかもしれない。本書では、わりと普通のキャラクターに見えるから不思議だ。
ちなみに文庫版の解説は笠井潔。
- 作者: 京極夏彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1998/09/14
- メディア: 文庫
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