『さよなら妖精』/米澤穂信


この作家は初読。ライトノベル系列だと思うが、なかなか面白かった。
ユーゴスラヴィアからやってきた“マーヤ”の存在をめぐるミステリだ。


鷹城宏の解説にもあるように、本書は「日常の謎派」のミステリであり、ボーイ・ミーツ・ガールの物語でもある。まだ世界を知らない受験生の守屋が、マーヤとの交流を通じて、外へと目を向けていく成長譚ともいえるだろう。だが文原のいうように、人間には「手の届く距離」というものがある。「外」に憧憬の念を抱くあまり、「内」への観察を怠った守屋の悔恨の思いは、痛々しい共感として胸をうつ。


さよなら妖精 (創元推理文庫)

さよなら妖精 (創元推理文庫)