『文庫版 百器徒然袋 雨』/京極夏彦


探偵・榎木津礼二郎が活躍(暴走?)する中編集。とはいえ、それなりの分量があるので、短めの長編が3本という方が適切かもしれない。毎度毎度、榎木津に担ぎ出される京極堂も、何気に楽しんでいるようで新たな一面が見られる。


「鳴釜」――集団暴行を受けた姪の無念を晴らすため、薔薇十字探偵社を訪れた語り手の<僕>。探偵は不逞の輩を「やっつける」といい出し、事件はとんでもない方向に……。


「瓶長」――榎木津の父により持ち込まれた「瓶探し」と「亀探し」。一方、京極堂は赤坂にある「壺屋敷」の憑物落としを依頼されていた。本書の中で、もっとも探偵小説らしい一品。


山嵐」――「箱根山連続僧侶殺人事件」の関係者、常信の依頼により、根念寺という禅寺を調査することになった薔薇十字探偵社。「薬石茶寮」という美食倶楽部を営む禅寺の正体とは。


文庫版 百器徒然袋 雨 (講談社文庫)

文庫版 百器徒然袋 雨 (講談社文庫)