『制服捜査』/佐々木譲


いやぁ、これはいいですよ。実家からの帰りの新幹線で一気読み。
佐々木譲、まだまだやるなあ。


主人公の川久保は札幌で強行犯係の捜査員をつとめていた敏腕刑事だが、定期異動で北海道警察本部釧路方面、広尾警察署志茂別町駐在所勤務となる。北海道警では警察官の不祥事を期に、ひとつの職場に7年以上在籍した者は無条件に異動するシステムに変わったのだ。最初は慣れないながらも、駐在所の警官として土地に馴染もうとする川久保。しかし彼は徐々に、この町の防犯協会の隠蔽体質に気づくことになる。


犯罪発生率・管内最低という触れ込みながら、どこか荒廃した町に単身赴任してきた川久保は、まるで西部劇の保安官のよう。ただし制服警官の彼には、捜査権がない。「駐在としての興味で」と断りつつ、町の人々から証言を集める。そんな川久保を支える「生き字引」ともいえる元郵便局員、片桐はウォルター・ブレナンばりの名脇役。この作品を、ハワード・ホークスに撮ってほしい(無理)! 『制服捜査』という題名が、そもそも矛盾をはらんでいて、近年まれにみる名タイトルだと思う(女子高生のコスプレ捜査にあらず)。文章のうまさは、いわずもがなですね。


ちなみにご存じない方のために。佐々木譲は『エトロフ発緊急電』(1990年)で日本推理作家協会賞山本周五郎賞日本冒険小説協会大賞をトリプル受賞。『夜にその名を呼べば』などのサスペンスや、『五稜郭残党伝』(蝦夷地ウエスタン!)『武陽伝』などの歴史小説も執筆。個人的には『ベルリン飛行指令』がベスト。


制服捜査

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