『晩春』/小津安二郎
<紀子>三部作の第一作。主演は原節子、笠智衆など。
まず、画面の隅々にまでいきいわたるモダンさに吃驚! サイクリングロードの「コカコーラの看板」とか、銀座のカフェの内装とか、とてもオシャレなんですね。主演の原節子も日本人離れした美貌で、あの大きな瞳で見つめられたら、どぎまぎするだろうなと感じさせられる。
筋書き自体はいわゆる「娘を嫁にやる物語」なのだが、結婚をしぶる娘のために父親の再婚話が持ち上がるなど、それなりに起伏がある。独特の会話の調子も、なんだかとても善良で、思わず頬が緩んでしまう。特に杉村春子の「熊太郎」連呼のシーンは、低空飛行しそうな物語をふわっと浮かび上がらせる軽妙さがあって大好きだ。こういう映画を丁寧につくることが許された時代は、いまとはまた違った幸福さにあふれていのだろう。
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