『銃とチョコレート』/乙一


講談社ミステリーランドの第10回配本。
箱入りのジュヴナイルで、平田秀一の装丁が美しい。


チョコレートが大好きな少年リンツは、ユダヤ系移民の子。肺病で父親を亡くし、薬品工場に勤める母親と貧しい暮らしを送っていた。そんなリンツはある日、父親に買ってもらった聖書から、一枚の地図を発見する。もしやこれは、怪盗ゴディバの宝の地図では? リンツは国民的ヒーローの探偵ロイドに、手紙を送るのだが……。


怪盗、名探偵、暗号、宝の地図など、ジュヴナイルに欠かせない豪華要素が満載。かつて<少年探偵団>シリーズをむさぼるように読んだ人間なら、至福のひとときを過ごせるだろう。伏線もとても細やかに張られていて、物語にいっさいのムダがない。このところ、殺伐とした警察小説ばかりを読んでいたので、こういう文体にはホッとさせられた。一方、描かれるテーマはなかなかに硬派。油断のならない小説でもある。「このミス」5位ランクインも納得。


銃とチョコレート (ミステリーランド)

銃とチョコレート (ミステリーランド)