『奪取』/真保裕一


日本推理作家協会賞山本周五郎賞をダブル受賞した長編サスペンス。「小役人シリーズ」や『ホワイトアウト』は読んでいたが、こちらはずっと未読だった。


ヤクザの街金から1260万円の借金をした友人・雅人を救うため、パソコンを使った偽札づくりを実行した道郎。いったんは成功したかに見えたが、偽札づくりの技術を手にしようとするヤクザから追われる身に。道郎は逃亡の手助けをしてくれた水田のもとに身を寄せ、新たな戸籍を手に入れる。
より完璧な偽札をつくりあげるために……。


本書が素晴らしいのは、第一部、第二部、第三部が独立した小説としても高い完成度を誇るところ。つまり、三つの小説分のプロットを惜しげもなく使っている。徹底した取材にもとづく偽札づくりの過程は圧巻だが、それ以上にユニークなキャラクター造形が痛快だ。一気読み間違いなしの傑作。


奪取(上) (講談社文庫)

奪取(上) (講談社文庫)