『刺青白書』/樋口有介


柚木草平シリーズの番外編ともいえる長編小説。


今回の主人公は女子大生の三浦鈴女(すずめ)で、彼女の中学時代の同級生が連続して殺害されたことから物語ははじまる。この鈴女という女の子は、とにかく世間とズレていて、小学校時代は「いじめられていることにすら、気づかなかった」というぼんやり具合。散歩の達人で、卒論の題材は「江戸時代の春本の社会学的効用」というのも面白い。


これまでのシリーズとは異なり、三人称の小説であるため、柚木の登場シーンなども新鮮な印象を与えている。女たらし、という設定は変わらないが、ずっとハードボイルドな雰囲気になっているのだ。38歳の大人の男らしさが垣間見えて、新たな魅力を発見できるのではないか。


刺青(タトゥー)白書 (創元推理文庫)

刺青(タトゥー)白書 (創元推理文庫)