90年代の清算(その2)


高校時代に、話を戻そう。
僕が通っていた高校は水戸一高といって、旧水戸城の本丸跡にある。一応、進学校なのだけれど、基本的には放任主義の学校だった。当時の男女比は2:1。先輩は「黄金比率」と呼んでいたが、あまり輝かしい雰囲気ではなかった。むしろ、僕の周囲には鬱屈した少年ばかりが集まっていたように思う。あるいはドロドロのタールのような環境に、居心地の良さを感じていたのかもしれない。


学校へは坂道を登っていくのだが、その途中には水戸三高という女子高があった。制服はセーラーで、いまにして思うとそれなりに可愛いかったと思うが、当時はまったく興味がなかった。心のどこかで、世界が違う、と感じていた。同じ年頃なのに、何の接点ももたない存在。そんな哲学的なことを考えるまでもなく、彼女たちはただの他人だった。


水戸三高の脇を過ぎ、坂を登りきると、深い堀を渡る橋に出会う。その下にはJR水郡線という在来線が通っていて、のどかな線路がずっと続いていた。あの線路を見ると、『スタンド・バイ・ミー』という映画を思い出す。高校卒業後、しばらくして、同学年の女の子がその橋から投身自殺したと聞いた。彼女は、失った何かを取り戻しにきたのだろうか。「あの頃が、一番楽しかったんだよ」。先輩の言葉に、僕は黙り込むばかりだった。それ以降、あの場所へは足を運んでいない。(つづく)