『銀河英雄伝説(1) 黎明篇』/田中芳樹


いつか読もう、と思って逃してきた宇宙叙事詩星雲賞受賞作。
創元SF文庫になったのを機に、全巻そろえてみる。


銀河系に一大王朝を築き上げたゴールデンバウム朝。一人の独裁者によって誕生した帝国は、500年の年月を経て腐敗と倦怠の道を歩んでいた。一方、民主主義を掲げる自由惑星同盟も、長年にわたる帝国との戦争により経済が疲弊。かつての理想は地に落ち、政治家たちの自己保身が優先されるご時世に。そんな中、帝国と同盟、双方の若き智将が戦場で相まみえる。20歳という若さで上級大将の地位を獲得し、“常勝の天才”と呼ばれるラインハルト・フォン・ローエングラム。対するは、“不敗の魔術師”の異名をもつ29歳のヤン・ウェンリー。二人は歴史のうねりのなかで、望むか望まざるかに関わらず、英雄としての役割を与えられていく。


覇者の座を狙う金髪の貴公子ラインハルトと、早く退役して歴史家になりたいヤンとの対照が見事。田中芳樹の小説は描写が案外あっさりしているので、物語の展開が速く、のめりこむように読めてしまう。それにしても上に立つ人間は、いつの世も大変ですねえ…。


銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)