『月の扉』/石持浅海


沖縄・那覇空港で発生したハイジャック事件。犯行グループの3人は、警察に留置されている彼らの師匠・石峰孝志を空港まで連れてくるよう要求する。しかしその矢先、ハイジャック機内のトイレで女性が変死をとげてしまった。果たして、この事件はハイジャックと関係があるのか?


神秘主義とミステリをうまく融合させた長編小説で、伊坂幸太郎『オーデュポンの祈り』や綾辻行人『霧越邸殺人事件』、山口雅也西澤保彦の諸作が好きな方なら、きっと堪能できるだろう。ハイジャック機内の殺人事件の真相はあっけないが、その後のどんでん返しが素晴らしい。たしかに、超常現象を肯定することなく、本格推理としての体裁を保つにはこの方法しかない。ブラックボックスを開けなくても、「真相」を語ることはできる。そんな野心に満ちた一作。


月の扉 (光文社文庫)

月の扉 (光文社文庫)