仮面の告白


どんなに平気なフリをしていても、平気じゃないことはある。
というか、フリをしている時点で、まさしく平気ではない。
たとえば子供は、ときに、親にひどい言葉を投げかけるものだ。
それは、親がすべてを受け入れてくれると信じているからにほかならない。
しかし親というものは、常に平気でいられるものだろうか。
実の子供から投げかけられた鋭い刃にこそ、深く傷つくのではないか。
そんなことを、思ったりもする。


美内すずえの『ガラスの仮面』の中に、
「はい」「いいえ」「ありがとう」「すみません」
だけで演技をするというトレーニングがあった。
これは、言葉の多面性をあらわすエピソードでもある。
言葉というものは、その前後関係、発せられたタイミング、
声色によって、その意味を大きく違えてしまう。
だからこそ、言葉を扱う職業に就くものは、
言葉に敬意を払い、言葉をおろそかにしてはならない。
その緊張感が、ある種の美しさを生み出すのだと思う。


ガラスの仮面 (第1巻) (白泉社文庫)

ガラスの仮面 (第1巻) (白泉社文庫)