『寄り道ビアホール』/篠田節子


好きな女性の作家を挙げるとするなら、篠田節子はかなりの上位にくる。『聖域』や『神鳥』には鳥肌が立ったし、『変身』はあまり評価はされなかったが、ラストのシーンが大好きだ。なにより、『ゴサインタン』で描かれた潔さに、いまの自分の仕事は深く影響を受けている気がする。


そんな篠田節子のエッセイは、すちゃらかでありながら、やっぱりどこか潔い。ビールジョッキ片手に、堂々と、朗らかに自説を語る痛快さが元気を与えてくれるのだ。

活力があり、なおかつ安定した社会、というのは、経済が右肩上がりの社会でも、年齢構成が若い社会でもない。おそらく多様性に富んだ成員を抱え込む懐の深さを持ち、矛盾や不平等や様々な問題をはらみつつ、あちこちから批判され、ふらふら、ぐにゃぐにゃと揺れながらバランスを取り続ける社会だろうと私は思う。


勇気が出た。


寄り道ビアホール (講談社文庫)

寄り道ビアホール (講談社文庫)