『青銅の悲劇』/笠井潔


帯コピーには、「矢吹駆シリーズ日本篇第1作」とある。
でも、カケルはほとんど出てこないので、その点は要注意。
舞台は昭和天皇が病に伏している1988年末の日本。
昭和という時代を、笠井潔の分身ともいえる作家の宗像が総括していく前半は、
読み応えがあって面白い。
ただ、毒殺未遂事件にはじまる探偵小説の部分については、
手続きばかり煩雑で、正直なところ読み飛ばしてしまった。
いつもの思想対決も、日本篇では鳴りをひそめている。
つまらない小説ではないのだけれど、読後に残るものもあまりなかった作品。


フランス篇については単行本化されていない第6作『吸血鬼の精神分析』のほか、
第7作『煉獄の時』も連載がはじまっているので、そちらに期待か。


青銅の悲劇  瀕死の王

青銅の悲劇 瀕死の王