『雪蛍』/大沢在昌・著



長期にわたり活躍する探偵は、珍しくない。
マット・スカダーやスペンサーなどが好例だろう。
だが、8年のブランクを置いて復活した探偵は珍しいのではないか。


雪が舞う北の海で、ひとりの探偵が女性歌手を捜し出すところから物語は始まる。
40歳を過ぎた探偵は名前を聞かれ、答えるのだ。


「名前、何ていうの?」
「公(こう)。佐久間公」


前作『追跡者の血統』からの鮮烈なカムバックである。


これまでのシリーズでは、20代という若さを武器に、10代専門の失踪人調査を行なってきた佐久間公。『雪蛍』でも17歳の家出娘を捜し、渋谷、六本木、新宿をさまよう。しかし40代を迎えたいま、彼は若者の街の異邦人でしかない。


20代の頃は、その若さこそが探偵としての才能であった佐久間公。
彼が年を重ねたとき、探偵という職業にどんな答えを見出すのか。


ぜひ、シリーズ初期からその軌跡をたどってほしいと思う。



雪螢 (講談社文庫)

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