『狼花』/大沢在昌


新宿鮫シリーズ第9作。前作『風化水脈』から5年近く経つのだなあ。


今回は、近年増え続ける外国人による犯罪の撲滅がテーマ。
警察庁に新たに「組対部」なるセクションが設けられ、公安畑の香田が本人の希望により、理事官として異動となる。その頃、新宿署の鮫島は、ナイジェリア人同士の暴行事件を発端に「泥棒市場」の存在を知り、捜査を行なっていた。そこに再び現れた国際犯罪者、仙田。さらに関西の広域暴力団・稜知会の幹部や、中国人女性・明蘭が絡み、鮫島は命の危険にさらされながらも捜査を続けていく。


日本の戦後史における警察と暴力団の関係は、確かに闇に包まれている部分が多い。深作欣二監督作『県警対組織暴力』などを観ても、「こいつヤクザちゃうんか」という警官がうじゃうじゃ出てくるわけで。しかし本書では、「毒をもって毒を制す」方法論をキャリアがぶちたてたことに対し、鮫島が現場の側からカウンターパンチを浴びせる、という筋書き。まあ、荒唐無稽な話ではあるんだけど、このシリーズはもとからそういうところがあるので、細かいつっこみはなしにしましょう。


鮫島の恋人のロックシンガー、晶もちょっとだけ登場するのだが、なんだかもう、どうでもいい捨て鉢な感じが作品には馴染んでいる。ヘンにラストあたりで登場されても、困るだろうし。話自体は面白いので、ローレンス・ブロックの<マット・スカダー>シリーズのように円熟の冴えを楽しむのがよいかと。あと、今回は課長の桜井が大活躍している気がする。


狼花  新宿鮫IX (新宿鮫 (9))

狼花 新宿鮫IX (新宿鮫 (9))