『幻詩狩り』/川又千秋


第5回日本SF大賞受賞作。1984年。
川又千秋の作品は初めて読むが、おったまげた。


シュルレアリスムの巨匠、アンドレ・ブルトンが出会ったひとりの青年。フー・メイと名乗る彼が創った詩「時と黄金」は、読むものを異界へと誘う恐るべき力を持っていた。そして昭和の終わりごろ、日本に持ち込まれた彼の詩は翻訳され、じわじわと社会を蝕みはじめる……。


歴史改変SFの面白さと、ラヴクラフト的な幻想性、そして複製される呪文という現代性を兼ね備えた本書は、傑作としかいいようがない。鈴木光司瀬名秀明といったJホラーの火付け役の、さらに先駆者といえるだろう。ある「詩」が麻薬以上の効果を持つ、という設定が素晴らしすぎるじゃありませんか。いままで絶版であったことが不思議なくらい、万人にオススメしたい一冊。


幻詩狩り (創元SF文庫)

幻詩狩り (創元SF文庫)