『隠し部屋を査察して』/エリック・マコーマック


ときには想像のチカラに身をゆだね、善悪を超越した世界を旅するのも、いいかもしれない。妄想はけっして、罪ではない。結局のところ、傷つくことがあるとしても、それは自分自身のほかにないのだから。


マコーマックの描く世界は、万華鏡をのぞきこんだような、不思議な陶酔をもたらせてくれる。理屈をつければ、いろんな評論がありうるのだろうが、この物語群を解体するのはもったいない。彼が語る驚異について、不思議について、ただ耳を傾けるだけで私にとっては充分だ。


語りのテクニックについていえば、「庭園列車」のような官能小説の書き方もあったのだな、という発見が面白かった。ベストは、「刈り跡」かな。


隠し部屋を査察して (創元推理文庫)

隠し部屋を査察して (創元推理文庫)